017 de bug 
ええじゃないかええじゃないかええじゃないか  本文中SAMPLE


(前略)


「報告は以上」
 夜になり、トシは俺の部屋へきて、いつものように今日一日の事、明日以降の事を話した。
「ん、ご苦労さん。あ、そうだこの前の警備のアレなんだけど」
 即立ち去ろうとするトシを引き止める為に俺は慌てて言葉を紡ぐ。仕事の話となればトシだって、知らん顔はできねェだろ。あー姑息。結局俺はさっとトシに近付いた。
「トシ。話位しようよ」
 痺れを切らした俺がトシの手首を強く掴む。トシの方から擦り寄ってくるまで待とうかなとか思ってたんだけど。トシの事になると大概堪え性がねェなァ俺も。
「何の真似だ」
 眉を寄せ口を引き結ぶトシに「逃げねェなら離してやる」と力を込めながら迫れば一言「……馬鹿力」と呟きが聞こえた。
 その声に俺が若干怯んだ隙に、トシはするりと腕を反して手首を抜く。うまいもんだ。思わず感心する。
「話なんかねェ」
 トシの言葉には角が立ち、瞳は嫌な、鈍い色を浮かべている。俺はゆったり呼吸しながら言い聞かせるように口を開く。
「トッシーとの事ァ悪かった。謝る。この通りだ」
「謝って欲しい訳じゃねェよ」
「じゃあどうすりゃいいんだよ」
「どうもしねェでいいよ」
 立ち上がろうとするトシの腕を再び掴む。次は離さねェ。逃げんな。俺から逃げんな。
「どうにかしたい」
「聞きたかねェ、知らねェ」
「トシ!」
 釣り込まれ感情的になった。荒げた自分の声に余計に苛立った。言い訳できねェ自分が悔しくて、俺はトシを胸にきつく抱き込む。
「離せよ」
 投げ捨てるように言うと、トシは小さく鼻を鳴らした。
「……て、言ってもアンタはするんだろ?」
 自嘲気味に吐き捨てたトシの言葉に、俺もさすがに眉をひそめる。お前、何言ってんの。どういう意味だと問うより先に、トシの腕が俺の背へ回り抱き合う形になる。
「好きにしろよ。セックスだろ?」
 腕の中で、トシのくぐもった声がした。力を緩めトシの顔を見下ろす。感情を殺した顔は青白く、俺を睨み返す目だけがギラついていた。
「トシ」





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