003 カラフルディズ 指先からの距離 本文中SAMPLE (前略) 「なァ。トシも、縛っちゃう?」 欲望の色を隠さずに、近藤がじっと目を見つめながら囁いた。 「な、んで」 アンタの手ェ縛ったのって、アンタが何でも言う事きくって自分から言い出したからだろ? 実際そんな縛ってねェしなんで俺がそんな事。 「俺、縛んの得意だよ」 にやにやと笑いながら近藤は手首の拘束を離す。 「……お盛んなこって」 そんなん俺、された事ねェよと軽くむくれる土方に、楽しそうな笑顔で「うん」と悪びれなく言うと、近藤は土方の降ろした腕を後ろで組ませた。 さっき俺がやった事だけど。後ろかよ。くそ、手錠とかじゃ外せねェな。 そう構えている土方の耳元に唇を寄せると、近藤が真顔になり低く囁く。 「そのまま。手、離すなよ?」 近藤の真剣な口調に、土方はびくりと震えた。 「離したら……。そうだな、今日はもう、お前とやんない」 吐息と共に吹き込まれた言葉の意味がようやく伝わると、土方は驚いたように目を見開く。 「……え、手ェ、縛んじゃねェの……?」 掠れる声で尋ねながらも土方は、後ろで両手首同士を握る力をぎゅっと強めた。 不安気に揺れる土方の瞼に近藤は口付ける。 「お前が、そやって手ェ離さなきゃいいんだよ。……な? 縛んの簡単だろ?」 口元を、にっと笑いの形に変え、近藤はじっと間近の土方の瞳を覗き込んだ。 「だ、て、そんなん、なんで、いつでも外せる……」 瞳に途惑いの色を浮かべる土方を愛しく思いながらも、近藤は目を眇める。 「うん」 ホントお前、可愛いな。どうする? 答えなんて判ってるけど、選ばせてやってもいいよ。 俺を、拒んでも、いいよ。 土方は、その言葉の意図を理解しながらも混乱した。 この人今、何て言ったの? 外したら、もうしない? だってそんな、こんな立ったまんまなんて、俺、今もアンタに触りたいのに。 そうじゃねェならちゃんと、できねェように、して。手錠でもなんでもいいから俺が泣いても喚いても解けねェようにきつく縛って。 「でも、お前は外さない。……だろ?」 顔を寄せられ、ざりざりと髭面で頬擦りされながら、土方は泣きそうになる。 「……ひっでェ……」 そんな事言われたら、俺に外せる訳がない。今だってこんなに欲しいのに。このままなんて絶対堪んねェ。 「今からだからな。手。離すなよ? ……したくねェなら離してもいいけど」 うるせェ。ニヤニヤしやがって。意地悪。酷ェ男だな! 近藤の唇が俯く土方の首筋を通り、喉に降りた。 喉仏を甘噛みし、鎖骨に軽く歯を立てれば土方は大きく上げた喉を喘がせる。 |