024 行く先は ここ 
ライオンの羽根  本文中SAMPLE


(前略)

 土方が言うと近藤は、肘をついて半身を起こし、土方の顔を上からのぞき込んだ。
「マジ? やった、じゃあ祭りデートだ。あんまり人こねーけど賑やかな祭り探しとく」
 ちゅ、ちゅっと音を立て近藤が頬に口付ける。そんな都合のいい祭りがあるかよと呆れながらも、土方の口元に、つられたように笑みが浮かんだ。
 その笑みに、やけに嬉しげな表情で、近藤が弾んだ声を出す。
「お前が、女にきゃあきゃあ言われてんのが好きなんだ。格好いいわ土方様、抱いてーってよ」
「そんな簡単な女はいねー」
 ふざけた裏声を使う近藤の髪に指を入れながら土方が笑った。その唇を近藤が軽くかすめる。
「いるだろ。オメー男前だもん」
 話す合間に何度も軽くついばむような口付けを交わしながら、近藤は自信ありげに目を細めた。
「アンタにそう言われても、対応に困るんだけど」
「あ、俺がモテねーから?」
 片眉を上げておどけてみせる近藤の頬を、土方は小さく指先だけで叩く。
「違ェよ。俺が惚れてんのが、アンタだから」
 甘く低めた声で囁くと、土方は近藤を真っ直ぐに見つめた。
「……お前がそんな顔すんの、スゲー好き」
 惚れぼれと感嘆混じりに呟いた近藤の様子に、土方は顎を上げ、喉を晒して小さく笑う。
「どんな顔だよ」
「世界一可愛い顔」
 即答し、ちゅ、と尖らせた唇を鳴らす近藤に、土方が瞬間、火照った顔をしかめた。
 可愛いと言われるのは未だに慣れない。バカにされているのかと疑心暗鬼になる事は、さすがに近藤相手ではほとんど消えたが、その分、その言葉欲しさに自分がわざと媚態を晒しているのではないかと羞恥が襲う。
 そんな考えを払拭するように土方を抱き締める近藤が、その頬へ、鼻筋へとキスを浴びせる。
 やがて土方もつられたように喉の奥で小さく笑うと、思わせ振りに舌を出し、上下に小刻みに動かした。近藤は微笑みながら、軽くその舌に誘われるまま唇を寄せてついばむと、土方の前髪を後ろへと優しく梳く。髪の匂いを嗅ぐように土方の体を腕に閉じ込め、近藤が鼻先をすり寄せた。
「明日っから当分一緒だから。デートの予定考えながら寝ようぜ」
 冷房が強すぎる、と土方は枕元へ伸ばした手でリモコンを探る。冷えてきた体に近藤の体温が心地よく、離れがたい。名残惜しい。まだ体内に近藤の放った欲が残っているような気がした。実際にはほぼ掻き出され、丁寧に始末されたと判っているが、久しぶりの実在を確かめるようにもう一度近藤と繋がりたいとかすかに思う。







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