やんちゃなクレバー 「総悟」 いつもより厳しい目付きで呼びかけると近藤は、軽く顎を動かし、沖田について来いと促した。それだけでついてくるものと決めてかかるよう、振り向きもせず無言で自室へ行くと近藤は、背筋を伸ばし正座する。 元より沖田に否はない。お小言だろうと見当はつくが、それでも近藤に直に呼ばれて逃げられる訳はない。 それにありゃァ、ちっと久々、愉快な見ものだった。そう思えば予想以上の収穫だ。近藤さんに叱られんのも端から折込み済みでさァ。 そんな思いを表には出さず、改まった態度で沖田も黙ったまま部屋へ入ると、近藤の向かいに正座した。そのままじっと近藤は口を開く様子もなく、沖田の事を真っ直ぐに見詰めてくる。何食わぬ顔で視線を受け止めながら、沖田もさすがに段々と居心地が悪くなった。 ……コラッて怒鳴って殴られて、屯所中追っかけ回された方がまだマシってなモンでさァ。 ふう、と意識して肩の力を抜くと、沖田は「今日の茶菓子は何ですかィ?」ととぼけた口調で尋ねてみる。 「総悟」 近藤が落ち着いた声でピシリと名を呼べば、それだけで沖田の口をつぐませる力があった。 「仲がいいのはいいけどよ。……あんまりトシを苛めんなって、俺ァ普段言ってなかったか」 言うと近藤は腿の上で軽く握っていた拳を解き、腕を組む。 「別に。苛めたつもりはありやせんぜィ。二人で親睦会開いてただけの事でさァ」 片頬を上げ、にやりと笑って沖田は最前から考えていた言い訳を澱みなく口にした。脳内でこの瞬間の対処を何度も思い描きすぎ、流れる言葉は却って上滑りする。自分でそれを意識しながらも、いざ近藤を前にした沖田にはどうしようもなかった。 「うん。そう言って、泊まりになっても総悟から連絡貰ってたから俺は安心してたんだよ。なのにトシがあんな怪我して戻ってきたんじゃ、洒落んなんねェだろ?」 声を荒げるでもなく、近藤は淡々と沖田を問い詰める。 「……あのヤローがチクッたんですかィ」 沖田が拗ねた声で唇を尖らせた。そんな顔をすれば腕利きの特別武装真選組の一番隊長の姿は、急に年相応の青年になる。目線を近藤から反らし、決まり悪そうに斜めに俯いた沖田を、近藤が、どこまで本気か見定めるよう軽く目を 「トシは何にも言わねェよ。擦過傷が多いのと、後、脱水症状な。そのせいもあってかちっと熱出して寝込んでる位で、明日にゃ起きるだろうけどよ」 一旦言葉を切った近藤は、ふ、と空気を和ませ、思い出したように言葉を続ける。 「屯所にさ、匿名の電話があったんだ。お陰で、トシの救出もまァ、スムーズに行ったんだけどよ。……お前、電話した?」 近藤には事態の詳細まではあまりよく判っていない。ただ、土方がうなされながら言った言葉に、沖田の態度を合わせれば多少の事は察しがつく。 「さァ? 親睦会で これ以上嘘を重ねてもマズイな、と判っていながらの口から出任せ、顔色を変えずに言えば、近藤は「ふうん」と唸って顎鬚を触った。 「……よし。総悟がそう言うんなら、そうなんだろうよ」 幾分か軽い口調になった近藤に、逆に沖田は不安気に眉を曇らす。 「近藤さん」 「ただし。一番隊の隊長でありながら、真選組の副長に供一人就けずに先に帰るたァ、俺ァ感心できねェな」 自分の呼びかけに被せるような近藤の言葉に、沖田がぐっと怯んだ。その様に近藤は更に仏頂面を作ってみせる。 「総悟」 「ハイッ」 道場時代の条件反射、ビシッと背筋を伸ばした沖田の顔を近藤が、軽く体を傾け、覗き込んだ。 「処分。一番隊長沖田総悟は、副長の身から目を離した 「……はァ!?」 「仕事の話以外、勿論挨拶も禁止。おはようもおやすみもお疲れ様もナシ。以上、戻ってよし」 言われた沖田の方としては、謹慎にでもなったならゆっくり昼寝ができて丁度いい、などと思っていたのが予想外の言葉にぎょっとした。 「ちょ、何言ってるか自分で判ってんですかィ?」 なんだそれ、処分ってーなァそれだけですかィ? と呆れるように思っていた沖田が、近藤との私語ナシのダメージに思いの外打ちひしがられるのに、それから時間はかからなかった。 |
タイトルは、ネットで見つけた男性ファッション誌? の煽り文句。 何この語感。裸で逆立ちしても5000%自分では思いつかない! 凄すぎる! とインパクトが強かった。 いつ見ても「なまはげ」位のインパクトのある言葉だ(しみじみ)。 一週間私語禁止、は本当は「挨拶禁止」でE.ケストナーさんという方の「飛ぶ教室」より。 全世界で超有名ですが、もしご存じない方がいらっしゃったら、 児童書で読みやすいので、ぜひ検索なりなんなりでご一読をオススメ。 目が醒める程、美しくて儚くて切ない、とても大事な日常があります。 そんで読んだらぜひワタクシと禁煙×正義談義でも(笑)。 てか、やおい妄想が申し訳ない程の本ですが。 サイトで振り仮名を初めて振ってみた。 読みにくい事になっていても、根性と前後のニュアンスで読んで下さい。 デジタル無能で申し訳ナイ。 08.11.03 |