愛があるから大丈夫! その日も近藤は目覚ましの鳴る少し前に目が覚めた。 早朝とはいえ既に明るい中、じっと目覚ましが鳴るのを待ち構えていると、時計が大きな音を鳴らす。 起きるか。 音を止め、そう思った矢先、寝間着のままの土方がスパンと景気よく襖を開き「おはよう」と入ってきた。 「おう。おはよ」 答え、あくびをする近藤に、土方は寝起きとは思えないきらめいた目で「好きだぜ」と告げる。 近藤はちらりとその様子を見、溜め息を吐きながら起き上がった。 土方はまだ髷を結っていた時分から、こうして自分に「惚れた」「好きだ」「付き合ってくれ」と言ってくる。 初めの内こそ驚き、とまどいもしたが、その度近藤は「無理」「俺、女が好き」「その気はねェから」と答えてきた。真選組を結成し、お互い局長副長と立場ができると、さすがに近藤は「人前でそういう事言っちゃダメ」と注意したが、それを素直に「判った。人前では言わねェ」とこちらを見上げる土方に、なんで断ってるのにまだ言うの? と尋ねれば「きっといつかアンタの気も変わるって。その時を逃がしたくねェんだよ」と言われた。 判らないではないが、そう簡単に気は変わらないからと、告白は一日一度と約束していた。 朝言われるのが一番よかった。下手に夜まで言われないでいると、いつ言われるのかといっそ気になる。 朝の挨拶程度で流すのが一番あっさりした。 それでもここ十日程は土方が言わなくなってほっとしていたものを。 「それ。やめたんじゃなかったの?」 頭をがりがり掻きながら、近藤はもう一度大きな溜め息と共に言った。 「駆け引きだ」 「は?」 「言われねェと、寂しかったろ?」 そう言って土方は、袂から取り出した煙草に火を点ける。 「無理。今日も俺、スッゲー女好き」 さっさと布団を直しながら近藤はがっくり肩を落とす。一度聞きゃ済むとはいえなんで朝から俺はこんな宣言を。 「畜生。なんだよ。十日の間、俺なんか毎日アンタから今日こそ告白されちゃうんじゃねェのってハラハラしてたのに! ってちょっと近藤さん、十日分言わせろよー」 一人テンションの高い土方を置き去りに、近藤は、俺は今日もお妙さん追っかけようと決意しながら、顔でも洗うかと部屋を出た。 |