サボりたい 鳴り始めた目覚ましに、近藤は咄嗟に手を伸ばし、音を止めた。 うう、と小さく唸ると深く眉間に皺を刻み、ようやくしっかりと目を開けて時刻を確認する。 夜明けまではまだまだ早いが、今日は朝一番の船に乗る為にターミナルへ向かわなければならない。 大あくびをひとつすると、近藤は枕元の小さな常夜灯の光に浮かぶ、傍らで眠る土方を見た。 これから出張で、一週間屯所を留守にする。大騒ぎする日数じゃない。 それでも逢えないとなると寂しくて、昨夜はお互いに朝が早い事を判っていながら抱き合った。 気持ちよかった。可愛いくて愛しくて欲情して貪った。 あー。……行きたくねェェェ。 身動ぎする近藤につられたように土方は寝返りを打ったが、寝付きも目覚めも悪いその目は固く閉じられている。 近藤は暫くうつ伏せ、枕を胸の下に入れ、腕枕でその寝顔を見つめた。 可愛いなァ、と寝惚けた頭でぼんやりと思う。 こうやって瞼閉じてると、きつくてくるくる表情変える目ん玉が見えなくて、昨日散々啄ばみあった唇は薄く緩んでて、お前、気ィ抜けすぎ。男前ってなァこんな顔まで微笑ましいな。 平和な顔しちゃってまァ。 短くした分、なんだか出会った頃より若く見えるような土方の柔らかな黒髪を、近藤はそっと指先で摘んだ。 早く俺も着替えねェと。荷物の支度は済ませてっから、顔洗って髭やって、飯はもーターミナル着いてからでいっか。 スースーと規則正しい静かな寝息を立てる土方の顔を眺める内に、近藤の口元に笑みが浮かぶ。 あァもう。いい顔してんなァ。 昨夜は「アンタが起きたら起こして」なんてそれも可愛い事言ってくれてたけど。起こせねェだろコレ。俺は船で寝りゃァいいけどお前は普通に仕事だし。 ここでもう一回お前に寄り添って抱き付いて、可愛い可愛いって甘やかして甘やかされて、そんな風に眠れりゃいいのに。 あー休みてェ。好きで、やっと掴んだ仕事だけど。実際は休みてェ訳じゃねんだけど、ただ後一時間だけでも、こうして、このままいれりゃいいのに。 てかアレ? もしかして俺出張って明日からで今日休みじゃなかったっけ? なんて考え、近藤は枕元の腕時計を手に取ると文字盤の小さなカレンダーに目を凝らすが、どう見ても出発日は今日だ。 知ってましたァ。ちょっと言ってみたかっただけですぅ。 近藤は内心で自分自身にそんな言い訳をしながら腕時計を嵌めると、土方を起こさないようひっそりと起き上がった。 |
「忍ぶれど」の平良さんにリンク報告をしたら わざわざなんだか相互でリンクして下さるという事で、 超緊張しながら書いたお話。 近土と言いつつ近藤さん話。 不甲斐ない…。タイトルも、これも本当に浮かばなかった…。 平良さん、ありがとうございましたー!! 07.09.16 |