「もっと」
昨夜は、少し度が過ぎた。 互いに酒が入っていたのは事実だが、そんなもの途中でとっくに抜けていた。 ふざけるみたいに抱き合って、キスに気をよくした二人して溺れるように布団にもつれ込んで、抱いて、その後うんと優しくした。 お前が今更何をって笑って煙草なんか咥えてんのをしゃらくせェって、後ろっから腕回して抱き付いて、くすぐってェだの言いながら笑う耳に「好きだ」と「お前だけだ」と囁いた。その度、どこまでそれを信じてるんだか、あしらうような相槌打たれて、俺はそれこそ今思や北風と太陽の太陽にでもなったつもりで、お前に色っぽい言葉を吐き続け、お前を褒めちぎり絶賛した。
普段、嫌われるのにゃァ慣れてる、なんて嘯いてみせるだけあって、お前は褒められんのが下手で、すぐに笑いながらの「もういいよ」が耳赤くしての「勘弁してくれ」になって仕舞いにゃじたばた身を捩って怒り出す始末で、俺ァそんなお前が愛しくて面白くって、逃げねェように腕ん中閉じ込めたまんま、もっともっとと可愛がって体中に唇当てて、舐めてしゃぶって、あちこち甘噛みしてはまた、俺がお前をどんなに好きか口にした。 囁くごとに赤くなって身を縮ませるお前の目尻に浮かんだ涙に調子に乗って、俺はもっともっとって。 誰に何されてるか言ってみろよってちゃんとホラ、もっと見てろよって。 切なそうに鼻を鳴らすのに気付いていながらひたすら優しくして泣き出すまでの無茶を強いたのはお前が可愛いかったから、なんてのが自分のわがままだって事位の自覚はある。 だから、なァ。 おはようって、いい加減口きいてくれてもいいんじゃねェの? 俺は確かにお前の照れた顔見て喜んでた意地悪だけどよ、嘘吐きじゃねェんだよ。 お前がどんだけ可愛くて、どんだけ俺が惚れてるか、そいつは嘘じゃねェからよ。
なァもっと、笑った顔を見せてくれよ。
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