クラスの女子と仙道

仙道と一般クラスメイト女子妄想。オリキャラ全開。
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「うわ、見てアレ。まーた仙道呼び出し受けてるよ」
 昼休み、ちーちゃんの言葉に窓から渡り廊下を覗けば、クラスメイトの仙道が、確かにどっかの女子に呼び止められている。卒業式を控えたここ最近は、それも見慣れた光景だ。
「三年も必死だよねー」
 タチバナはポッキーを齧りながら、そんな様子を軽く鼻で笑い、私に話を振ってきた。
「ミズキってマジ、仙道とはなんでもない訳?」
 その言葉に私は、思わず鼻水が出そうになった。
「ないない。ありえない。仙道はない」
 勘弁してよと手を振って否定する私に、ちーちゃんとタチバナが畳みかける。
「なんでよ。ミズキ仙道と仲いいでしょ。よく話してんじゃん」
「私聞かれたことあるよ。「ミズキと仙道ってつきあってるの?」って。美術の時、隣のクラスの同じ班の子から」
「ないって」
「否定するほど、ってやつなんじゃないのぉ?」
 タチバナが、ちょっと醒めた風でいて食い下がる。からかうなっての。
「仙道はー……。ないでしょ。あれは駄目よ」
「でもさ、ミズキだったらマジで告ったらアリかもよ?」
 ちーちゃんはそう言うけど、私が駄目って言うのは、仙道がこれまでに何人断ったとかそんなことじゃない。
「見てれば判るじゃん。仙道、絶対私に惚れないもん。私、ちゃんと自分のこと好きになってくれる人とレンアイしたいタイプだからさあ」
 なにを納得したんだか、タチバナは私の言葉に何度も頷きを繰り返した。
「あぁ。あるね。ある。アイツそういうトコあるわ」
「でっしょ? 仙道はナイナイ。恋愛対象じゃない」
「ワカルー」
 私とタチバナの話に、ちーちゃんは「そうかなあ?」と首を傾げている。
 ちーちゃんは可愛い。優しくておっとりしていて、たぶん仙道が好きになるとしたらこんな子なんじゃないかなと思った。
 よく判らないけど、私みたいなタイプは駄目だ。それだけは絶対だ。そう思うとなんだか妙に腹が立ってきた。
「大体仙道、モテすぎ。なんで猫も杓子もよりにもよってアレな訳?」
「アレって言ってもスターでしょ、陵南の。顔もいいし背もあるし」
「まぁね、バスケやってるとこは格好いいしさ、確かに優しいし話しやすいけど」
「……この流れだから言うけどさ、私、最初一瞬だけ仙道に惚れてたことあるよ」
「マジで!?」
 この中で唯一彼氏のいるタチバナの話に、私は思わず大声になり顔をあげる。
「だってやっぱ格好いいしね。一年の最初の頃は、ちょっといいなと思ってたよ」
「マジ? へぇ……」
 それ彼氏の竹下も知ってんの、なんて聞いてもいいんだろうか。他人のレンアイにどのくらい食いついてもいいものだろう。折角仙道から意識がそれた私に、ちーちゃんが悪気なく呟く。
「ミズキなら仙道とお似合いなのに」
 そんなこと言われても。だって、あれは駄目だ。絶対私のものにはならない男だ。
 賢い私は、身の程を知っている。謙遜じゃない。私には無理だ。
 だから私は、仙道には絶対に惚れない。
 その時、仙道が教室へと戻ってきた。私たちがダラダラ話す隣の、自分の席に戻る時に仙道は、目聡くポッキーの箱に目をとめた。
「あ、いいもん持ってる」
「食べる?」
 散々仙道で盛り上がったし、告られてる……のかどうかはよく判らないけど、ちょこっと覗いちゃったし。
 苦しゅうない近う寄れ、とばかりに慈悲の心で一本差し出せば、仙道は腰を屈めて直接それに齧りついた。
「ちょっ、自分で持てっての!」
 驚いて目を剥く私に仙道は「ああ」と今気づいたような顔をしてから笑った。
「サンキュ」
 私の手から齧りかけのポッキーを取ると、あっさり残りを食べている。
 チャイムが鳴り、ちーちゃんとタチバナがそれぞれの席に戻ったあと、私は自分の鼓動をなんとか抑えようと必死だった。
 なんで仙道みたいな男がいるんだろう。なんでそれが私のクラスで、隣の席で、格好いいけど優しいけど、絶対手に入らない男なんだろう。
 ドキドキする。嫌だ。自分が自分じゃなくなりそうだ。だけどホントは自分じゃなくなるなんてことあるわけなくて告白する勇気もなくて、くっそう。
 仙道なんて、大嫌いだ。




13.3.23 日記にUP

仙道は罪な人。

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