森重×仙道 1



「ふう」
 仙道はクラブハウス内のシャワールームで汗を流すと、軽く体を拭き、タオルを腰に巻きつけ服を入れたロッカーへ向かう。
 下級生が片づけを済ませたあと、一人コートでシュートフォームを見直していた為、遅くなった。周囲に人影はない。もうじきここも消灯の時刻だ。
 腹が減った、今から食事を作るのは面倒だ。なにか食って帰ろうか。
 そんなことを考えているとロッカールームの扉が開かれた。
 反射的にそちらへ目をやると、森重が首から下げたタオルでこめかみを伝う汗を拭いながら近づいてくる。
 今日は森重は筋トレで体育館にはいなかった。この時間までやっていたのか、と仙道は視線を戻し、ロッカーを開く。
 のっそりと歩く森重は、声をかけるでもなく通り過ぎ、シャワー室へ向かうかと思われたが、仙道の背後までくると立ち止まった。
 ゆっくりと伸ばされた森重の両腕が、仙道を挟むようにしてロッカーへとつけられる。
 森重が軽く身をかがめ、振り向かずにいる仙道の、耳の辺りに唇を寄せる。その気配に仙道が口を開いた。
「触んな」
 いつも穏やかな仙道が身じろぎもせず制止する口調を意に介さぬように、森重は湯上りの石鹸の香りが残る目の前の耳を唇に挟んだ。
「やめろ」
 嫌そうに仙道は首を傾ける。
 耳以外、どこも触れていない男の体から、こぶしひとつは空いた空間を通してでも、背中越しに熱が伝わってきた。
「森重、自分勝手であんまり慣らしてくんねーから嫌い。もうお前とはしねー」
 前方のロッカーを見つめながら淡々と告げる仙道の言葉に、森重は耳をなぶる唇を離した。だが仙道が、ふ、と息をつくと今度は遠慮なく体に腕を回し抱きついてくる。
「なん、だよ」
 自分より一回り大きな体に背後から抱きすくめられると、仙道の鼻を森重の汗のにおいが包む。ランニングシャツから伸びた森重の裸の肩が仙道の肌に触れ、ぬるりと滑った。
「ふざけんな。オレ今シャワー浴びたってーの」
 勘弁してくれと顎を上げ、呆れたように吐き出す仙道の腰のタオルの中に、森重の手の平が潜り込む。
「んっ。……最悪」
ぎゅ、と強く目をつむった仙道を抱きながら森重が、へへ、と小さく笑いをこぼした。
「優しくすりゃあいいのかよ」
「……バカ野郎」

夜が、はじまる。





12.8.26 日記にUP
 初の森仙がこれっていう…。

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