森重×仙道 2

仙道とドライブ森重編。
森重とオープンカーでドライブなら、運転は基本森重。ああ見えても運転は荒くない方がいい。
一本道ずーっとまっすぐ、とかで仙道は助手席で爆睡ですが、首ガクンとなっちゃって、「…オレ、後ろで寝るから」って動く車の中そのまま移動で後部座席で爆睡。
そのまま意識がフェードアウト、気がつくと頬っぺたになんか冷たいものが。
「…? え、なに? うわ、雨! 森重、なんでお前まで寝てんだよ!」
気がつくと車は湖を目の前にした森の中で止まっててね。
運転席で、すかーっと寝てる森重の坊主頭をぺちぺち叩いて起こして「幌! 幌!!」って。
以下、唐突に小話形式。

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 慌てて幌をすれば危機一髪、雨は本降りになってきた。
 バラバラと天井に響く雨音がやかましい。
 周囲が薄暗いのは天気のせいばかりではなく、日が落ちてきているのだろう。再び助手席に移動した仙道は、ちらりとガソリンメーターへ目を走らせた。
 幸いメーターはまだ十分な残量を示している。となればこの見慣れない森の中で停車していたのは、ガス欠ではなく森重も純粋に眠くなったということだろうか。
「大体ここ、ドコだよ」
 尋ねる仙道へ森重は顎をしゃくり、前方を示す。
 やけに切り開かれていると思ったその場所は、目を凝らしてよく見れば青い水をたたえた湖だった。
「あんたナントカって湖、見たがってたろ」
 その言葉に仙道は軽く目を丸くして森重を振り返った。以前に何気なく口にした自分の言葉を覚えていたのだろうか。
 だが、目の前の場所はあの湖とは方角も大きさも何もかもが違う。
「あの湖はこっちじゃねぇよ。大体あれはこんな色じゃねェし」
 それでも、自分が喜ぶだろうと思いこの湖へと回り道をしたのだろうか。それはなんだか嬉しいような気がする。
 決まり悪そうに黙り込んだ森重につられるように仙道も口を閉ざした。
 特に急ぐ旅でもない。大体今夜の宿すら決まっていないのだ。今日はここで眠るのも悪くはない。
 熊などがいなければの話だが。
 そう考えると、仙道は小さく噴き出した。
「なんだよ?」
 軽く唇を突き出す森重に、仙道が笑いながら答える。
「ん。今さ、ジェイソンが出てきたらオレたち真っ先に殺されるな」
「バカじゃねーの」
 突飛な空想のくだらなさに、森重も鼻息を鳴らした。
「あんた、ジェイソン怖ぇの?」
 手持無沙汰の与太話、と森重が会話に乗ってくる。外は雨が酷い。夜明かしはともかく、もう少し小降りになるまでここにいてもいいだろう。
「ジェイソン怖ぇよ。あんまり詳しくねーけどさ、オバケじゃなくてチェーンソー持った人間なんだろ? オレ霊感ねぇから、とか言ってる場合じゃねぇもん。ずりぃよジェイソン。怖ぇ」
 台詞とは裏腹に、言いながら仙道は肩を揺らし小さく笑っていた。
 その顔を見て森重も、楽しそうに目を細めた。
「オレ。ジェイソンより強ぇぞ」
 口角を上げ、森重は仙道に向かい、不敵に微笑んでみせる。
「は、ははは!」
 予想もしていなかった言葉に仙道は声をあげて笑った。
「森重、ジェイソンにもその調子で挑発しろよ? オレ、その隙に逃げるから」
「逃げんのかよ」
「当たり前だろ、怖ぇもん」
「だから。怖ぇんなら余計、オレの傍にいろよ」
 ふ、と真面目な色の混じった言葉にそちらを向けば、森重はフロントガラス越しの湖を睨みつけるようにしている。その耳が少し赤いのは、気のせいだろうか。
「……お前がオレを守ってくれんの?」
 仙道とて人並み以上に体格も運動神経もいい。他人にこんなことを言われるのは初めてで、なんだか面映ゆい。
 だがこんな雨音だけが響く森の中、二人きりでなら誰かに守られるというのも悪くない。
 そう思うと自然、口元に笑みが広がっていた。





12.12.30 日記にUP
 

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