愛があったらしたってイイじゃん・5 次の日、映画はやめにした。 近藤さんは俺が好きな任侠物でいいって言ってくれたけど、この人自身はそんなに任侠物とか好きじゃないの知ってるし。この人の好きなほのぼのコメディってな別に俺も嫌いじゃねェけど、やっぱちょっと退屈だし。 だから折角デートだってェなら、近藤さんの顔を好きなだけ見ていられる方がいいかなって。 それならと近藤さんはあちこちにこんな場所がと誘いをかけてくれたけど、どうせなら外でちょっと飲みたいし。車出すのも呼ぶのも面倒だって俺の言い分を聞いてくれて、結局いつもの小料理屋で落ち着いた。 出かける前に既に一風呂浴びてきた近藤さんは、こざっぱりしている。ズルイ。 俺もそりゃ着替えちゃきたけど、風呂も使ってくればよかった。 そうやって内心見とれてんのに気付いてるんだかいねェのか、近藤さんは笑顔で酒を勧めてくれる。 まーったく。人を酔わせてどうする気だ。 あんまり飲んで正体なくしちまうのも勿体ねェから、酒はほどほどにしとく。代わりにって訳じゃないけど、出てくる肴に好きなだけマヨかけてると、俺の嗜好を知ってる筈の板さんがちょっと呆れたような悲しい顔をしてたけど、近藤さんはニコニコいつもの恵比須顔で、ふーんだ。そうやって精々俺の機嫌取ってろっての。 俺はといえばそんな風に、近藤さんが俺の機嫌取ってるって考えて、ああくそ、簡単に上機嫌で悪かったな。 自分の単純さに加えてちょっと今になって後悔してる事とかあって、あー。考えるの面倒だって思っちまうとついつい酒に手が伸びちまうから、やっべ、自重しねェと。 だから近藤さんが、こっち見てあんまり飲んでねェって気付いて「ちょっと早いけど二軒目行こうか」なんて外出て歩く袖をちょうどいいやと引いて耳打ちをした。 「アンタまだ飲み足りねェ?」 「ん?」 振り向いて、こっちにちょっと首傾げた顔ってのがなんとも色っぽい。 ちょっとの酒で理性を黙らせ、欲望の力を借りた俺は細い路地を構わず歩き、近藤さんを連れ込み宿まで先導した。 「寄ってく?」 顎をしゃくって入り口を示せば、近藤さんは俺にちらりと視線をくれて、先に店の敷居を潜る。 こういう時、無口になる近藤さんってのは妙にがっついてて、なんか、いい。そんなの、勿論内緒だけど。 案の定、部屋に入った途端に壁に押し付けられて唇を貪られる。 それが気持ちよくて、俺もこの人の口を吸いながら、髪に指を入れた。 「ん、トシ……っ」 足で膝を割られて着物越しとはいえ近藤さんのモノを俺のものにこすりつけられて、たまんね、背筋をぞくぞく快楽が駆け上る。 そういや俺は怒ってたんだって、その為に昨日まで近藤さんの手ェ振り払ってたんだっけって思い出して、もつれるみてェに布団に転がり込んだ隙に、「ちょっと待て」って。 「逃げねェ、て、なァ……」 近藤さんの体をどうにか押しとめ、肘で体を起こしてどうにか座ると、俺は懐から捻って口を閉じた紙袋を取り出した。 「今日は、コレな」 顎をしゃくって開けろと近藤さんへ示しながら言うと、俺はちょっと時間をやろうと煙草を吸い付けた。 |