愛があったらしたってイイじゃん・6

「コレってトシ」
 袋の中を覗き込んだ途端に、ぶふ、と近藤さんが噴き出している。
 中身は言わずもがな、先日近藤さんが持ち込んだ例の張り形だ。
「お前、こんなモンどんだけ持ち歩いてんの」
「今日だけだよっ」
 なんでそんなとこだけ冷静なんだ。そうだよ、スッゲー恥ずかしかったよ! だっからとっとと酒切り上げてアンタを連れ込んでんだろがァ!
「へー……」
 満更でもねェって顔してニヤニヤしてやがる近藤さんを見たら、なんかもう、腹が立つ!
 あーヤダヤダ。やっぱ早まったか。とは、思うけど。
 ここからが復讐だ。
「そいつで、俺に悪戯してェんだろ? 構わねェよって言ってんだ」
 苛立ち紛れに横を向いて、ぷーっと長く煙を吹く俺を、近藤さんがうろんな目つきで見る。
「どういう風の吹き回し?」
 おっ。警戒してる。賢いじゃねーか。
「べーつーにーィ? 俺は今日、こっちで遊ぶってだけ。アンタのモンは自分で処理しろよ」
 言って煙草の火を灰皿で押し消すのを確認した近藤さんに腕を取られた。その手をこの人の股座に持って行かれる。
「なんだそれ。俺の、もうこんなだぞ。放ったらかしかよ?」
 手の平には確かに、熱と、既に芯のある硬さが伝わってきた。けど、ここでなし崩しになっちゃ近藤さんの思う壺だから。
 ちょっとばかしそのままぎゅって握ってやったら、近藤さんがやがて「ギブギブギブ」って前屈みになる。面白い。
「手ェだけなら貸してやる。けど、そんだけだからな。今日はアンタの……してやんねェ」
「嘘ォ。誰が可愛くてこうなってると思ってんのよ?」
 今度はこの人は自分の着物の裾をばっと開いてまくってみせた。
 悪気のない笑顔と比べて、近藤さんのモノは下帯ん中でしっかり存在を主張していて、思わず目が吸い寄せられる。
 脈打ってんのまで透けて見えそうってか、見えねェもんかなって、いやそんな、期待とかしてる訳じゃねェけど、……生唾飲み込んじまった音が、近藤さんに聞こえてなきゃいいんだが。
「お前ん中に……入れちゃくんねェの?」
 近藤さんの声が、低くかすれる。
 やっばい。またなんか、スイッチ入ってる。俺がそういう声に弱いって、なァ、アンタ知っててそやって迫ってくんだろ? 
 徐々にのしかかる近藤さんの体の下で、逃げたいような、とっととおっぱじめたいような、なんともいえない気分になって、とりあえず目の前の頬っぺたをつねってみた。
「痛ェです」
 真面目な顔して俺に覆い被さる近藤さんの目をじっと見て、つねる手を離してやると、俺はぷいっとそっぽを向く。
「うるせェ」
 だって、目ェ合わせてたら、絶対またキスしたくなるし。この状態でキスしたら、流されて、結局アンタの気が済むように、あれよあれよでいつも通りだ。
 俺は、まだ、怒ってんだからな。
 だって、そうだろ。俺がなんでアンタと寝てると思ってんの? おもちゃなんざ持ってきやがって、俺がまるで欲望だけでアンタと付き合ってるみてェ。
 そりゃアンタとするのは、いいよ。もう慣れたってーか体に憶えこまされたってーか、アンタが俺のうなじに手ェ置いて撫で上げただけでブルってきちまうけど。抱き締められたりのしかかられたら、背中に手位回しますけど。
 気持ちよくて頭おかしくなるって、実際目の前真っ白になる程よくって、アンタに縋りついて、そのままもっと、なんてねだったりもしますけど。





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